施工・修復
時代を感じる喜び
【現場:山田】
得意先の依頼で古い石灯篭を移設することになりました。
この石灯篭は、傘と火袋を繫ぐ枘(ほぞ)、格狭間の模様、宝珠の形、火口に障子を取り付けるための4ヶ所の枘等、鎌倉時代から室町時代の作品と思われる意匠が多く見受けられ、初めて見たときから解体・移動するのが楽しみでした。
古遺品の石灯篭は隣り合ったパーツの接合部に、きちんと枘・枘穴を穿ち繫がれており、その手法も石灯篭の重要な要素で、解体の時にその状態も確認できるからです。近世以降の作品はコスト面などから、枘が作られているものが、少なくなりました。
石灯篭は上から宝珠、笠、火袋、中台、竿、基礎、という部分に分かれる構造をしています。
宝珠から順に解体していくと、予想通り全ての接合部(中台と火袋部未確認)に枘・枘穴が確認でき、鎌倉から室町期の作品であることが濃厚になりました。
この石灯篭が制作されてからかなりの時が経っているにも関わらず、大きな欠損もなく、ほぼ完全な形で残っているのも、しっかりとした枘で繫がれていることが大きな要因でしょう。
ここまでの古遺品を解体・移設する機会はそうそうありませんが、得意先様のおかげで石灯篭の逸品に触れる又とない機会となりました。