施工・修復
八木邸工事
こんにちは大平です!すっかり春めいてきましたね。世間は変われども桜の美しさは変わらないな~、とそんなことを思うこの頃でした。これから芽が吹き新緑の季節になります。自然のエネルギーを強く感じれるのではないでしょうか。
さて今回は「八木邸工事」のお話をしようと思います。
今回のブログのテーマはずばり!「道具」です。その道具とは…
- 修羅(しゅら)
- 三又(さんまた)
- チェーンブロック
の三つの道具です。順を追って説明していきます。
工事内容は「景石の据え直し」です。ある地点から八木邸の中庭に景石を移動する工事内容でした。先輩によると「300㌔は有るだろう」との事で、緊張感のある現場でした。
最初に据えられていた写真を撮り忘れてしまったので景石を取り出した後の写真をお見せします!すみません!!
上の写真が景石が元々あった場所です。非常に風合いのある景石でしたが横に植わっている楠が大きくなったりと存在感が薄くなっていました…
ここでは三又(さんまた)と呼ばれる道具とチェーンブロックという道具(後ほど写真で説明いたします…)を用いて、景石を取り出しました。見て頂ければわかると思いますが非常に狭い範囲での作業になり、大変でした(泣)
景石を取り出した後、中庭へと運ばなければなりません。そのために用いたのが「修羅(しゅら)」と呼ばれる道具です。
こちらが修羅です。
この画像はウェブサイト上にある画像です。この画像の修羅は古墳時代の物と言われている修羅でとんでもない大きさなのが分かるかと思います笑。(こちらの修羅は全長8.8m、幅1.9m、重さ3.2トンです!)
私自身、修羅について調べてみたのですが、これがまた面白い!!
Wikipediaに概要等載っていたので、詳しく知りたい方はアクセスしてみてください!。
→(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%AE%E7%BE%85_(%E3%81%9D%E3%82%8A)
まとめますと、
- 重機の存在しなかった時代に重いものを運ぶ重要な手段で、古墳時代には古墳の造営にも使用されていた。
- VないしY字型の形状
- 大石をタイシャクと読み、それを帝釈天に引っ掛け、帝釈天を動かせるものは阿修羅すなわち修羅であると語呂合わせからきたものとされている
修羅は造園屋業界では現在でも使われているものです。形を変えず現在でも使われている、つまりは用途に対して「究極の形」と言えるのではないでしょうか。形を変えない物というのは非常にロマンと言いますか、魅力がありますよね。それはやはり「機能美」があるからではないでしょうか。「究極の形」…男心をくすぐられます笑。
修羅を用いて中庭に景石を運ぶのですが、中庭への入口の幅に限りがありました。そこで先輩の案によって現場にジャストサイズの修羅を作る事になりました。
こちらが今回用意した修羅です!説明したような形の修羅ではありませんが、改良版と呼べると思います。といいますのも、横に転がらないような「受け」も取り付けられているからです。先輩も「修羅みたいなもんや」と仰っていました。
ここまで運んで来るのも大変でした…
ここまでどのように運んできたかと言いますと、修羅だけではなく修羅とセットで使う「コロ」と呼ばれる丸太を用います。
もう一度写真をご覧いただければ分かるかと思いますが…
修羅の下に見える数本の丸太が「コロ」です。使い方は、修羅の前にコロを並べ、修羅を押して前進していき、修羅の後ろから出てきたコロをまた前に持っていき目的の場所まで修羅を転がしていく、という使い方です。ピラミッドの建設風景を思い浮かべて頂ければ合点がいくと思います笑。
そんなこんなで運んできた景石ですが、今度は据えなければなりません。
据えるには、景石を取り出す時にも用いた「三又」と「チェーンブロック」を用います。
画像内の三本の括りつけられた丸太を「三又」と呼ばれる道具です。その三又にぶら下げてある道具を「チェーンブロック」と呼びます。このチェーンブロックは約1トン程度まで持ち上げることが出来ます。
この2つの道具の使い方を説明いたします。
- まず三又にチェーンブロックを括りつけます。
- 次にチェーンブロックの先のフックに持ち上げる物(今回の場合景石)を掛けます。
- その後、チェーンブロックのチェーンを引いていき物を吊り上げていきます。
- 吊り上げたら、三又の丸太一本ずつに一人つき、目的の位置まで一本ずつ丸太を動かしていきます。
- 目的の位置まで来たらチェーンブロックで吊りおろしていきます。
と、このような流れです。イメージ出来たでしょうか?
「大型機械を使えばいいんじゃないの?」と思った方もいるかもしれません。確かに、開けた場所では大型機械を使ったほうが早い場合もあります。しかし今回は限られた空間しかありません。そのような場合に役に立つのがこの「三又」なんです!三又は回転移動したり障害物を飛び越えたりすることができ大変有能な道具です笑。そういった理由で今回三又を用いる事になりました。
こちらが据えられた景石です。
いかがでしょうか。上手く据えることが出来ました。少し青みがかっている石で、岩肌はごつごつとした男っぽい雰囲気のある趣あふれる石です。厚みもありどっしりとしていて存在感があります。
今回石を据えるという事で苔をはがさなければなりませんでした。苔が不足していた箇所もあり、新しい苔を張ることになりました。
このように新しい苔を張っていきました。そうして出来上がった中庭がこちらです!
いかがでしょうか。苔も新しくなりお庭が一層趣が深まったのではないでしょうか。
今回の景石の据えなおしを行ったのは八木さんというお客様で、八木邸の敷地は新選組ゆかりの地として、新選組ファンには有名な所だそうです。実際に観光客らしき方もお見えになっていました。八木邸では専門のガイドさんによる、中庭を眺めながら新選組のお話を聞ける時間もあるみたいです(お抹茶付きだそうです!)。
ご興味のある方は是非「壬生屯所旧後」と検索しご覧になって見てください!。
今回のテーマは「道具」でした。「修羅」、「三又」、「チェーンブロック」、この三つの道具の使い方を理解して頂けたでしょうか。道具は用途に合わせて存在し、その用途に合わせて使うことによって最大の効力を発揮します。場所、作業内容などによって持っていく道具、数など、経験しなければ道具を選ぶことも出来ません。多くの現場を経験し引き出しを増やしたいものです。そんなことを感じた現場でした。
「引き出し」、という言葉で思い出した言葉があります。
「センス=引き出しの数」
センスを磨くとは、多くを経験し多くの引き出しを持つことか…そんな事を思った今でした。
現場での先輩を見ると納得します。日々精進ですね。頑張ります。
それではまた、近日公開のブログでお会いしましょう~!大平でした~